ゆかりは黙ったまま…というよりは茫然としたまま、ただじっと目の前の男を見つめた。



「…………おい?大丈夫か?……おーい?」



男が目の前で手を振るのも気にすることなくゆかりはただじっと男を見つめ続けた。



「…あ、なるほど。俺がかっこよすぎて見つめてんのかー……」



ふざけてみても、反応はなし。

実際かなりの美男子なので見とれないこともないわけではない……が、今ゆかりが見つめているのには訳があった。

ゆかりのよく知っている彼に、目の前の男は似すぎていた。



「あー……ゆかりさん?……おーい?……そろそろ話でもしませんかー?…………って……猫から人になったんだからちょっとは驚けよ……」

「……………一輝……くん…」



擦れたような声でゆかりはぽつりと名前を呼んだ。



「……え?」



自分の名ではない名前を呼ばれ、男は訝しげな顔をした。



「一輝くん……?」



男はその名前を聞き、首を傾げて考え込むと、あぁとわかったように頷いてゆかりへ笑顔を向けた。