「綺麗だね。だけどこんな道の真ん中でぼんやりしてたら危なくない?」


声をかけられても、なおゆかりは気付かないまま桜が散るのを見ていた。


「ゆかり?」



肩に手を置かれ、やっとゆかりは気が付いた。

振り返り見上げた相手は、優しい笑顔でゆかりを見つめていた。



「一輝くん……」



漆黒の切れ長の瞳がゆかりを見つめ、その端整な顔が可笑しそうに笑った。



「危ないよ、道の真ん中でぼんやり立ってたら。拓海に叱られるよ?」

「……ありがと。一輝くん今帰り?」

「そう。拓海が部長会議だっていうからさ、一人で遠回りでもしようかと」

「……そっか」