「花を…では…惜しむ少年の……」



古文の朗読は神崎ゆかりの耳には聞こえていない。

神崎ゆかりは教室の一番後ろの席で、夢と現実の間を行き来していた。

窓からは暖かい日が射し、爽やかな風が少しだけ入ってくる。

これで眠くならないほうがおかしい。

夢と現実の間に漂いながらそんなことを思った。



「これは…源氏が……を懐かしみ………」



古文は嫌いじゃない。

だけどこの気持ちいい天気には勝てない。



「…であるから……」



体が沈んでいく。

だんだんと現実が薄れ、ゆかりは夢の中へと落ちていった。



.