一面の緑の中を白い猫がゆっくりと建物に向かって歩いて行く。

紺碧の瞳が御簾の向こうの人物を映した。

猫はそのまま縁側に登り、部屋の中へと入っていく。


御簾の前で留まり、じっと紺碧の瞳で部屋の奥を見つめた。



奥で衣擦れの音がした。




御簾をあげて猫の前に現れたのは、身の丈以上もある黒髪を一つにまとめ、肩へと垂らした気品漂う一人の女。


単衣の上へ袿を数枚重ねただけの軽装で表へ出てきた。


彼女は穏やかな微笑を猫へと向け、そのまま前を通り過ぎて縁側に腰掛けた。



猫は鳴くことも傍に寄ることもせず、縁側に座った女の後ろ姿を見つめている。