それは今より2年前、高校に入学したての頃。



その年は、いつもより長く桜が咲いていたのを覚えている。

4月も下旬にさし掛かろうという頃になって、ようやく桜が散り始めた。

3月下旬から4月下旬まで約1ヶ月間咲いていた桜を、世間では異常気象に伴う現象として連日ニュースに取り上げていた。



実際、桜が散る頃は少し怖いくらい綺麗だった。


少しずつ散るのではなく、一日で木一本分の桜が一気に散るのではないかと思うほど、雨のように花びらを散らした。


風もないのに、ただただ雨のように桜の花びらは散っていった。



高校から少し離れた路地裏には、狭い道に空を覆い隠すように桜のアーチがかけられていた。


空も地面も桜色に染まったその道で、ゆかりは初めて市原一輝に出会った。



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