「お母さん!早く早く」

「ちょっと待ちなさいよ。まだ時間はあるんだから」

「はーい」

この時のあたしはまだ7歳。
小学2年生だ。
あたしは病気をしたことがなくすごく元気な普通の女の子だった。
でもなさか1年後にがんになるなんて・・・・・この時のあたしは予想もしなかっただろう。大切な人も失うことになるなんて。

「さ、着いたわよ」

あたしのお兄ちゃんは陸上をしている。
あたしとは7歳離れていて今は高校1年生。
スポーツの名門校紫咲高校に通っている。
お兄ちゃんは小学校の頃から絶対的エースだった。
種目は100メートル。
中学の頃中学生の部男子日本記録を生み出した。
あたしはお兄ちゃんが走っている姿が大好きだった。
いつもふざけているお兄ちゃんがレーンに並んだとたん表情が変わってゴールしか見えてないそんなお兄ちゃんの顔が大好きだった。
だからお兄ちゃんの試合は毎回見に行っていた。

「琳聖頑張りなさいよ」

「お兄ちゃん頑張って!!」

「絶対優勝するから」

「位置について。よーいどん!」

「「ワー」」

歓声があがる。
この瞬間胸がドキドキしてたまらない。

「新記録がでました。だしたのは紫咲高校1年生の雪野琳聖選手です」

やったねお兄ちゃん!
この時は心から嬉しかった。
でもね、大好きなお兄ちゃんはもういないの。

「お兄ちゃん!!」

バフ。
あたしはお兄ちゃんに飛びついた。

「おめでとうお兄ちゃん」

「痛いっつの。ありがとな」

「琳聖おめでとう。今日はごちそうね。お父さんにも連絡しなきゃ。琳聖はなにが食べたい?」

「うんとね。ハンバーグ!」

「あんたじゃないでしょ」

「母さん俺もハンバーグがいい」

「嫌なら嫌でいいのよ?」

「嫌じゃないよ」

「やった!お兄ちゃん大好き」

「明日は部活休みなの?」

「明日は休みだよ」

「じゃあ遊ぼ」

「ああ。いいよ」

「千華はほんとにお兄ちゃんに事が好きなのね」

「うん!だーいすき」