「…絶対に見つからない時間っていつ?」

畳みかけるように俺に聞く。

「……見つかって、親から何か言われるのも…もう嫌。
だから、絶対死にたいの」

「……昼間藤井さんの家に親はいる?」

「いない」

「じゃあ、昼間かな」

「………私の家?」

「そう」


多分ね、これが一番なんだ。
一番周りに迷惑をかけないと思う。
…いや、迷惑をかけない死に方なんてないけど。


「睡眠薬って手に入った?」

「うん、一応…知り合いから譲ってもらった」

「そう、なら大丈夫だね。明日俺がお酒買っていくよ」

「………わかった」


その時。
電車が来て、俺と藤井さんはそれに乗り込んだ。


もう、二人とも何も話さなかった。


ボックスシートに二人並んで座る。
繋がれたままの手。

お互い、視線を絡み合わせる事もなく。
ただ、ガタンゴトンと線路を走る音だけを聞く。


これも、明日で終わり。

どこか、やり切れない気持ちは何なのだろうか。


死んで欲しいと、あれほど思ったのに。