「尚…」



あなたがこの町にいることなんて知りもしなかった。



ゆっくりイヤホンを取って流れていた音楽を止めた。





「元気?」



「うん…元気」



別れて以来の再会。




「美緒…なんでこの町にいるんだよ」



「…ちょっとね、電車間違えた」



顔が見れない…。




「へー、意外なこともあるんだな」



「……まぁね」



そうか。

尚はあたしが少し抜けてること知らないんだ…。



少し頼りない尚の前ではしっかりしたあたししか見せなかった。



違う。


見せなかったんじゃない。

見せられなかったんだ。



「尚は…大学は?」



「…俺、美緒と別れて大学辞めたんだ」



「え?」



尚が大学を辞めた…?