「昨日、伊織の車取りに行ったの俺」


「…は?」


ちょいちょい~…
佐々木じゃねえの?

俺、こいつパシったわけ?


「まじか~…わりぃな、千里」


「いや、それはいいんだけどよ…」


千里が何やら口ごもる。
……本当に何だ?


「…泉ってお前の女?」


「はっ?何で泉のこと知ってんの?」


その質問に、俺の心臓が早鐘のように鳴り響く。


「……昨日、キー置きに来たら泉ってずっと呟いてっから」


…俺が?
泉って?


「ま、まさかー、間違いだわ間違い」


「それならいーけど…お前泣いてたぞ」


「え?」


「それだけ言いたかったから、それじゃあ」


そのまま、扉を出ていく千里に返事も出来ず。
俺は立ち尽くしていた。



「泣いて…いた?」



千里の言葉をリピートするが、全然実感が沸かない。


俺が泣く?



……俺が?



女の事で泣いた…?