好かれたら。


嫌われたくないと、必死に願ってしまう。


それが嫌だ。



好きな相手に拒まれるほど苦しいことはない。


どんどんと扉を叩く音がする。
と、同時に俺を呼ぶ声。



「伊織~」


…………この声は千里?

寝呆けながら扉に向かう。


返事もせず俺は扉を開けた。


「うお、お前起きてたなら返事しろよ」


「……はよ」


「もう、余裕で昼過ぎだっつうの」


少しぷりぷりしながら、千里は部屋にずかずかと入ってくる。
……何だ?


「…どーしたの、千里」


「……」


俺にそう、聞かれてから千里は一度俺を見てから、視線を部屋に移した。
それからゆっくり、慎重に話しだす。


「……昨日のこと、覚えてないか?」


「昨日?」


「お前、潰れてたじゃん」


「ああ、俺全く記憶ない」


千里はまた黙って、ソファに腰掛けて足を組んだ。