「……私っ」


電話越しの泉が、力強く話す。


「あれから何度も何度も伊織のこと忘れようとした。
だけど、無理だった。
無理ならとことん砕けようと思ったの」


「俺は会う気ないよ?」


「っ!!」


ズバッと言われて、泉が息を飲むのが聞こえる。


「……今はいい、絶対!
絶対会えるから!」


「…………」


言い切った。
こいつ、言い切った。


まじ、何?


「あのね、私さっ」


何か言おうとしてる泉の声を俺は無理矢理切った。


…………やめろ。



俺の中に入ろうとするなよ。
真っ直ぐ、ぶつかってくんなよ。


わかんねーよ、そうゆうの。
俺、泉の行動理解出来ねーよ。


また震える携帯を俺は思い切り投げる。
蓋が取れ、電池パックが飛び出して、また部屋には静寂が訪れた。



だけど、俺の胸はざわざわとしてうるさかった。