気が付くと、違和感を感じた。
周りの景色に。
自分の身体に。
目の前に人間が立っている。
その手には動かなくなった彼。
『やめて! 彼に何をしたの!!』
叫んだはずの声はどこからも出てこない。
身体さえも動かせない。
人間は私の顔に、彼を置いた。
そして鋭い針が彼と私を貫いた。
全く痛みは感じない。
動かない彼と動くことのできない私。
呼びかけても返事をしない彼の命は止まっていた。
そして私の身体も死んでいた。
瑞々しい姿のままで。
密着した私達にガラスケースが被せられる。
ライトが反射してキラキラ、チカチカ。
見惚れる程の美しい世界。
時が止まった私とアナタ。
もう離れることはない。
銀の針が二人を繋ぐ。
このまま二人で朽ちるその時を待つのも悪くない。
毎年アナタを待ち、アナタを想って泣く事もない。
ずっと一緒。
永遠に寄り添い続ける。
薄れゆく意識の中で、私は今までにない位に幸福感に包まれていた。