「今一人暮しなんだ。母さんは再婚してそいつの家にもう住んでるんだ。」


「なんで、そんな急に。」


「看護婦だろ母さん。入院患者だった女の人が赤ちゃん産み落として

  
 男でひとつで途方に暮れてる旦那の世話をしてるうちにそうなって


 で、結婚するなら早く一緒に暮らして世話したいって言って、


 籍入れて行っちゃったよ。」


「そんな、宝君は自分の子なのに。」


「俺が行けって言ったんだ。もう自立する年だから。」


いつだってそう宝君は自分の気持ちを表に見せたりしない。


辛くったって、平気な顔をする。


「何カッコつけてるのよ、あたしは知ってるよ。


 宝君がお母さんをどんなに大切にして、守ろうとしたか。」


小さいころから甘えるのが下手で大人っぽかった宝君


優しくて不器用な宝君。


神様、もしいるのなら、この人をこれ以上辛い思いをさせないで。


あたしは宝君にぎゅうっと抱きついたてわんわん泣いた。


泣くこともできない、不器用な宝君の代りに。