前から、打診されていたことだった。


結婚してイギリスの大学の教授をしている母の兄には子どもがいない。


養子にならないかという話だ。


しかし、深沢の姓は俺の父親の生きた証で、


それだけは守りたいと断り続けていた。


母の件で、再び持ち上がった時には、


養子ではなく、単純に俺を援助するから医者を目指さないかという話だった。


大学を目指す俺にとって、学費はネックだった。


母を頼れなくなった今、奨学金だけでは大学に通いきるだけの


資金を確保するのはかなり無理があった。


医者だった父の意志を継ぎたいと考えていた俺は、


伯父さんからの話は渡りに船だった。


そして決心したのだ、


イギリスの伯父の申し出を受けることを。


ただ、それにブレ-キを掛けようとするのは、


穂香ちゃんと健一との繋がりだった。


俺は彼らから離れてちゃんと生きられるのだろうか。