宝君の前であたしはポロポロと泣いた。


「あたしは、紬君大好きだったの。」


宝君はそんなあたしの頭を優しくなでながら


「大切なものは、一つじゃないよね。


 紬と一緒の10年は穂香ちゃんにとって大切なものなんだね。


 ごめん、俺が現われなかったら、


 穂香ちゃんはきっと、紬と違う幸せを見つけられてたのにな。


 でも、手放してはやれないよ?


 俺は、好きな子を簡単に手放すことができるほど優しい男じゃないから。


 君は俺を選んでくれたのでいいんだよね?


 おれが傍にいるのでいいんでしょ?」