紬君は、

「いつか手放さなくちゃって、分かってたよ。

 俺はもう穂香ちゃんから卒業しなくちゃね。幸せになって。」 


そう言って店を出て行った。


あたしはその後ろ姿が寂しくて悲しくて胸が張り裂けそうだった。


紬君と別れた後、

あたしは、宝君に紬君との思い出をたくさん話した。


紬君とあたしには苦い思い出から始まったけど、

高校生という多感な時代を一緒に過ごした紬君

あたしの中の宝君を大切にして指一本触れてこなかった。

いつも紳士で、彼といるといつも安らいでいられた。

親友だった。

大学も学部こそ違ったけど同じ大学に通い、

困った時、いつも助けてくれた。

あたしのせいで彼女とん別れた事もあったけど。

『ほのかちゃんが一番大切。』

と言ってくれたことに甘えていた。

多分、あたしは宝君に拘りながらも、

ずっと、紬君に疑似恋愛をしていた。

10年という月日は、そんなものも

愛に変わるのには十分な時間だった。

多分あたしは、紬君が好きになってた。