「じゃあ、不良が困っているお年寄りに笑顔で手を貸すと思いますか」


「は?」


「その他にもっ……お兄ちゃんの学校で道に迷った初対面の私を出口まで連れてってくれたり、危ないからって家まで送ってくれたり、女の子に風船とってあげたり、轢かれそうになった男の子を助けてあげたり、溺れてる子犬助けに行ったり!」


「いや送ってもらってる間になんでそんなにいろいろ起こってんのよ! そっちにびっくりだよ!」



美咲ちゃんの鋭いツッコミが入り、一度ストップする。

早口で一気に話したせいで軽くむせてしまった。でも美咲ちゃんには私の言いたいことがしっかり伝わったらしく、「わかったわかった」と言って大きく頷いている。


そう、私の好きな人――松下京介さんは、不良は不良でも、最高に人のいい不良なのだ。

いや、人のいい不良って不良とは言わないだろうとは思うけど。

ただ、不良じゃないのかって聞かれると、違うとしか言いようがない。

お兄ちゃんの学校の不良グループの幹部らしいし、本人も相当な喧嘩好きで(とは言っても一般人とは喧嘩はしない。あくまで不良相手の喧嘩のみだ)。
それを不良と言わずになんというのかという話であって。

世間から見たら、彼もろくでもない不良という認識になってしまうのだ。


「っていうかあんたの場合、兄が兄だから不良とかそういう問題じゃないような……」


「いやまぁ、そうなんだけど……って、私口に出してた?」


「出してないけどだいたい分かる。……ん?」


急に立ち止まった美咲ちゃんを不思議に思って、彼女の目線を追ってみる、と。