「…実亜…。」
ああ。そうか。
私、先輩の腕の中にいるんだ。
ポカポカしていて、あたたかい。
心地いい。
混乱していた頭が次第に落ち着いていくのが分かる。
「落ち着け、実亜。
お前が嫌だって言うならぜってぇ誰にも言わねぇから。」
「…ひ…ひか…る先…ぱ…。」
本当?本当に?
「でもな。俺も訳も知らずに納得できる程いいヤツじゃねぇ。
…分かってくれるか?」
先輩の声は優しかった。
心が安らぐ気がした。
「…はい。」
私の口は自然と動いていた。
「だから。話して欲しい。
お前が今、泣いている理由を。
痣の原因を。」
…いたんだ。
この世の中に、この世界に、こんなにも優しい声を出せる人が。
言葉だけで、こんなにも安心感を与えられる人が。