あたしはいつものように耳にイヤホンをして音楽を聞いていた。
ぼーっとしていると…

ドンっ

「痛っ…」
誰かがあたしに思い切りぶつかった。 
こんなことは日常茶飯事であまり気にしなかったが…今日は違った。
昨日火を押し付けられた所に思い切りぶつかったのだ。 
まだ痛みが残っててぶつかったことでジンジンと痛みだした。

「ごめん。大丈夫?」
ぶつかった人が言った。
「大丈夫です…」
口では言えても体中に痛みがはしる。
汗がでてきて涙が浮かぶ…
お願い。そのままどこか行って!
でも…願いは叶わずぶつかった男の人は 
あたしの体を優しく支えながら人があまりいないところまで
連れて行ってイスに座らせた。

「ホントにごめん、どこかケガしたの?」
あまりに優しすぎてびっくりした。

「大丈夫です。」 
と顔をあげると…

かっこよすぎる人がいた。息が止まりそうだった。
背が高くて目が大きくて長いまつげ…
スッときれいな鼻…
一瞬にして目を奪われた。


「大丈夫?おーい」
「えっ?あっはい」
完全に意識が飛んでいったあたし…
痛みもどこかへ消えていった。

「ホントにごめんね。ケガしたのかと思った。」
「全然大丈夫ですよ。こっちこそ気使わせちゃってすみません。」
目を見て話してるけど…心臓がバクバクする。
心臓がもたないよ…

「そんなことないよ。それじゃ、行くね。」
「はい。」
彼は手を振って人ごみのホームへ消えていった。

心臓がまだバクバクしている。
それにしても…かっこよくて優しい人だったな。
ジャージを着て肩からエナメルバッグをかけていてそれが本当に似合っていた。

また会いたいな…