どこかへ行ってしまった…
まだ握っていた右手が温かい…
心臓はバクバクする。

しばらくすると彼が戻ってきた。
「これ。」
そう言ってジュースをくれた。
しかもあたしの大好きなオレンジジュース。

「ありがとうございます。」
嬉しかった。

「あの、ごめんね。勝手に連れてきちゃって。 
ずっとあそこにいるのつらいって思って…」
彼の優しさが嬉しくて他人に優しくしてもらったことが親友の友梨くらいで。
こんなあたしにも優しくしてくれることが嬉しかった。
「全然。こっちこそ昨日と今日助けてもらってありがとうございます」
あっ!昨日とか言ったけど覚えてるかな…
「そんな。昨日はごめんね、大丈夫?」
覚えててくれた!嬉しくてたまらない。
「大丈夫です!」

「元気そうでよかった。」
彼は笑った。
眉が下がって目が細くなって笑顔までかっこよかった。
見つめてると目が合った!
吸い込まれそう…
顔が赤くなるのが自分でもわかった。

「俺は柏木隼斗。君は?」
「あたしは愛、愛村莉子です。」
「莉子ちゃんかぁ~」
あたしの名前を言う隼斗くん…
ますます顔が赤くなる。
「何年なの?」
「高校1年です」
「あっ!一緒。俺も高1」
びっくりした。
「ウソだ!」
「ホントだよ!タメだよ」
そう言ってまた笑う隼斗くん…
「年上に見えました」