「……武士として腹を切らせてもらえるのならば、それほどの幸せはありません」


「幸せ?それが幸せ?」


「えぇ…。一武士として死なせて貰えるのならば、幸せのほかの何物でもない」


――分からない…


――山南さんが分からない


ズルッと沖田は倒れ込んだ


「沖田くん!?どうしました!?」


山南は慌てて、沖田の背をさすった


「…んなんさん…山南さんっ!なんで逃げないんですか!?どうして…どうして見つかってしまうんですか!!」


泣きじゃくる沖田がいた


子供のように顔を真っ赤にして訴えている


――あぁ…懐かしい


そう山南が遠い目をしていたことは、知らないであろう


ただただ、泣きじゃくっている


……しばらく経ち


山南と沖田は屯所へと戻った


静けさを増す、京の朝


鳥の囀ずりさえも聞こえない


そのなかで、静かに彼らは屯所の門をくぐった


死への時間が迫っていた