***

「もうそろそろ、私を捕らえに来る頃だろうと思ってましたよ」


逃げるでもなく、山南は穏やかに言った


彼の部屋の火鉢の中では、パチパチと灰が弾けている


ただその音だけが響く


「山南敬助……屯所への同行願います」


いつもより引き締まった沖田の声


山南もそれに気づいたのか、笑みを消した


本当ならこのまま江戸へ帰らせたい


でも、今は


新撰組という組織が邪魔をする


「さあ…帰りましょう。待たせては悪いですよ」


そそくさと山南は荷物をまとめ始めた


でも…、そんな山南を沖田は見ていられなかった


今の自分を必死に隠そうとしている


――きっと恐れている


――自分の死を…きっと


スッと沖田は己の刀に手をかけた


そのとき…


「いけませんよ、沖田君」


いつもの口調で、山南は言った


「……死ぬのが怖いというのならば!…今ここで私が殺してあげます」


そっと静かに沖田は答えた