「伊東先生…部屋でお二人がお待ちです」


と、斎藤がやって来た


「あぁそう…すぐ行くわ」



再び扇子を広げ、伊東は上機嫌に去っていった

***

伊東が行ってしまったのを確認すると、斎藤が怒りに満ちた様子で碧を見据えた


そんな滅多に見たことのない斎藤の態度に、少し怖じ気づいてしまう


合わされている目線が碧にとって、心地が悪い


どうするべきか困っていると、


呆れたように斎藤が口を開いた


「ここで何をしていたんだ?……伊東は危険だぞ」


「はい…すみません」


まあいい、と斎藤は目を伏せた


「今夜は近藤さんと土方さんと伊東さんで話し合いをする。酒を用意してくれ」


「は、はい!分かりました!」


慌てて碧は勝手場へと向かおうとする


でも、その手を斎藤が止めた


「少し、待ってくれないか?」


掴まれた手は離せなかった


「どうして…?」


意味もなく尋ねる


二人の間を流れる静寂は、嫌みのように過ぎ去っていく