「あら、これが修羅場というものかしら?」


沖田と入れ替わるようにして、伊東が現れた


伊東は碧を見下すようにして続ける


「今の貴女には、あの人をどうすることもできませんわ。…助けようとすればするほど、彼は苦しむ」


口元を扇子で覆い隠し、彼は笑った


「そんなこと分かってます!でも、私は沖田さんを助けたいんですっ」


キッと伊東を睨み付けた碧は、近くにあった石を投げつける


でもそんなものは、伊東にとって紙くずのように軽く避けられた


「あらあら、そんなに怖い顔して……。貴女に似合わなくってよ」


言うなり、伊東は顔を近づけた


気づけば目の前に伊東の顔がある


――!!


以前のこともあり、碧は敏感に避けようとした


でも……


「逃がしはしませんわ。…今の新撰組に貴女は必要かしら?それくらい分かるでしょう?」


「私は、必要とされていなくっ…「それなら、私と一緒に来ませんの?」


「一緒に行くって…何を言ってるんですか?」


ぎゅっと掴まれている手が、少しだけ緩まった


その隙に、碧は伊東から離れる


「あら、まだご存知なくって?……私たち伊東一派は新撰組と離隊いたしますの」


ふふ、と微笑んだ伊東は続けて碧に言った


「それにともなって、貴女にも付いてきて頂きたいの。…どうかしら?」


「付いていくって…そんなのっ…!近藤さんや土方さんには!?」


二人の名前が出ると、彼は顔を歪めた


……すると、奥から誰かの足音が近づいてきた