読み終えた沖田は、静かに文を握りしめた


音もたてずに文は小さくなる


「……僕はこれから山南さんを連れ戻しに行くんです」


「連れ戻すって…そんなっ!」


「新撰組には法度があります。それに背いた場合は切腹に処される」


見えない彼らの掟


それは鉄よりも硬く、心よりも脆い


気づけば碧は沖田を抱きしめていた


「……連れ戻しに行っちゃ駄目です!!」


涙で震える声を必死に押さえた


「春日さん…」


そう言うと、沖田は碧の腕を離した


「貴女は未来からやって来てしまった……それは事実です」


「どうして今、そんなことが関係するんですか!?」


興奮する碧は、涙で溢れていた


沖田は短く息を吐くと、細く長いゆびで碧に伝う涙を拭う


「そんな貴女は、僕の行く末を知っているのでしょう?」


「…っ!だとしたら、なん…「なら尚更…春日さんの言うことには従えないです」


沖田の指が、涙を拭うことをやめたとき…


再び冷たい風が頬を掠める


「未来は変えてはいけないと思うんです。…だから僕は行きます」


「沖田さんっ!!」


そのまま沖田は振り返ることなく、去っていく