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自分を掠めていく風は、冷たさを増していた


コートとか耳当てとかなんて無くて……


碧は半分、心が折れかけていたかもしれない


はぁっと感覚を失いつつある手に息を吹きかける


白い吐息は一瞬ではあるが、手を温めた


そんなことを繰り返していると…


ヒヒーンと馬の鳴き声が聞こえた


――誰か出かけるのかな?


そう思い、碧は鳴き声の聞こえた小屋へ向かった

***

そこには…


「沖田さん!……どこか行かれるんですか?」


降り積もる雪と同じくらい、白い顔をした沖田がいた


彼は馬にやっていた干し草を戻すと、碧に目をやる


でも、その目にはいつものような明るさはない


――?


なんだか様子が変なことに気づいた碧は、再び声をかけようとしたが…


「……今から山南さんを連れ戻しに行くんです」


かける前に彼は言った



「山南さんを連れ戻しに行くって…?山南さんはいらっしゃらないんですか?」


「春日さん、知らないです?……山南さんは脱走しました」


「えっ」


事情を知らない碧に、苛立ちを見せるでもなく、沖田はさらりと言った