「総司……。くれぐれも逃がすなんていう馬鹿は起こすなよ?」


「承知」


言うと、土方は部屋から出た


足音は止まらずに遠くへ遠くへと響きわたる


「なぁ…総司」


タイミングを見計らっていたように、近藤が口を開く


押さえている涙を見せまいと、沖田は必死に堪えていた


「……なんでしょう?」


震える声と押さえきれない感情


その両方が溢れる胸を圧し殺す


「……もしもの場合は逃がせ。罰なら俺が受けてやる」


――この人ってば…


驚く間もなく、沖田は微笑んで答えた


「その必要はありませんよ。山南敬助はもう罪人なのですから」


――私は馬鹿だ。


――嘘で人を殺めていいのか。


助けたい…本当なら


でも、それは新撰組に相応しくない行動


「そう…「近藤さん。……あなたは局長ですよ」


しっかりしてください、と目で伝えた沖田は部屋を出た


「総司もなかなか立派になったな……」


そう近藤が呟いたことは知らずに。