夜になり…


いつものように夕食を済ませ、各々部屋へ戻っていく


山南も同じように部屋へ戻っていった


でも……


「何?山南さんがいない…だと?」


「はい。夕食を済ませ、自室に戻っていったところまでは目撃されているのですが、その後の行方が分かりません……」


屯所内に衝撃が走った瞬間だった


山南の草履がないことに気がついた隊士が、土方へ報告してきたのだ


「…今すぐ馬でも出せば間に合うのかもしれねぇが……」


徒歩で出ていったことに間違えはない


でも山南が起こした行動


それは紛れもなく、


――脱走。


新撰組隊内では、切腹に処される重い罪


それを覚悟してのことなのか…


このことはすぐ、隊内に知れ渡った

***

「…総司」


部屋の主が居なくなり、ひっそりと静まり返った山南の自室


そこには近藤、土方、沖田がいた


灯りが点らない中、沖田は山南の書き残しの言葉を見つけていた


――江戸へ帰ります


この言葉に詰まっている意味は1つ2つではない


…もう帰らないつもりなのだと、一目で分かった


「僕が山南さんを連れ戻して来ます…。与えるべき罰は見逃しちゃいけませんよね」


ぎゅっと握りしめた拳に、じとっと汗が滲む