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話にならない、と土方を睨み付けて山南は席を立った



どうしようもない気持ちの高なりは、治まりそうにない



山南が反対することは分かっていた



それを承知の上での話…



山南が去った部屋で、土方はごろりと盛大に寝転がる



「……どう転ぶかは時間の問題だな」


未来が見えるわけではないが、少なくとも嵐の予感がした

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「どういうことです!?近藤さん!!」


今、近藤の部屋には山南が来ている


ものすごい剣幕とともにやって来た彼に、近藤は動揺していた


「お、落ち着いてくれ!どうしてそこまで反対するのだ?……長州を抑えるなどには良案だと思うのだが…」


「良案ではありませんよ!…我々は幕府に仕える身。そんな人たちが武力で寺を抑えるなど言語道断!」


つまりはこの西本願寺の移転は、新撰組にとって最悪の提案


これからのことも考えての山南の意見だったが……


「…まぁ山南君、ここは歳に任せよう。伊東先生もいらっしゃる…事を大きくするのはどうかね?」


近藤を含め、新撰組には受け入れられなかった


山南にのし掛かった己が受け入れられない現実


それは山南敬助はもちろん、新撰組にも新たな悲劇を呼ぶこととなった