「……屯所移転?それを本気でお考えで?」


移転を知らされた山南は、首を傾げた


その反応は正しい


なぜなら、今の新撰組に移転先が無いからだ


無いにも関わらず話を進める土方に、山南は微かに怒りを覚えた


「あァ。俺は本気で考えている」


「ならば移転先は?京に親しい人物がいるわけでもないが……」


「山南さん…。あんた、そこまで頭の働かねェ人じゃないだろう」


ますます首を傾げる山南を見、土方は間を置いて言った


「長州をひいきしている西本願寺があるだろ…」


「っ――!」


新撰組と長州藩は敵対同士だ


その長州をひいきしている西本願寺に住めば、彼らは隠れ場所を1つ失うことになる


だから、下手な動きはできない


それが土方の考えだった


――しかし、山南は……


顔を真っ赤にして土方を睨みつけた


「そんなことをしていいと思っているのか!」


怒声が響きわたる


普段からあまり怒りを出さない山南は、誰に対しても優しい


でも、今はその山南が怒りに狂ってしまった