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がやがやと騒がしい宴会場を出る


夜特有の冷たい風が、ほろ酔い気分の自分を引き締めさせた


中庭に降り、近くにある椅子へと腰掛けて空を仰ぐ


どこまでも果てしない空はこの時間、星でいっぱいだ


そんなことしてると、悩みだって無くなってしまいそうなくらい澄んでいる


でも…


今の俺はそんな軽い悩みじゃない


俺、藤堂平助はたった1つのことに悩んでいる


「伊東…さん」


江戸にいたときからお世話になっていた道場主である


近藤さんからの頼みで新しく迎え入れた……


でも、それはきっと……いや、確実に


「間違いだったな……」


土方をはじめ、同志たちの反応がよくない


正直、伊東のように考えの深い人間はどっちかといえば、苦手だ


しかし、そうであっても


自分にとっては、江戸からの同志であり、尊敬している大切な人なのだ


「……碧」


空を仰きながら、ぽつりと出た言葉


少なくとも、伊東は碧に目をつけている


碧も……


藤堂にとっては大切な人だ