「…春日」


不意にかけられた声に、いつもなら答えることができるのに…


声が出せない


呼ばれ、顔を上げると土方が腕くみをしたまま碧を見下ろしている


でも


いつもなら険しい表情が、今は少しだけ緩んでいた


そして、ふっと微笑み…


「大丈夫だ、心配すんな。…お前には~その~…」


言うと、鼻の頭を掻きながらそっぽを向く


照れているのだろうか…?


それから決心したように、でも落ち着いた声音のままで…


「お前のことを守れる男たちがいる。…お前のことを守りてェって思ってる男も居ることを忘れるな」


「…えっ」


すーっと風が横切ったかと思うと、土方はもういない


小さくなる彼の背に、碧は小さな声で問う


「守ってもらいたいって…思ってもいいですか?」


――私はあの人に…あの人に守ってほしい


願わくば、ずっと傍にいてほしい


…ずっと傍にいたい


流れゆく時間は止めることができない


だから


だから、ずっとあの人が笑いかけてくれるのを待ってる…