「土方さんっ!」


碧の後を追って来たらしい土方がいる


汗ばんだ手をぎゅっと握りしめた


…何も悟られないように


「お前、本当は何かあったんじゃねェのか?」


近藤たちの前では心配していないようにしていたみたいだが、本当は心配していたようだ


でも本当のことを言ってしまったら、伊東の耳にどう入るか知れたものではない



黙っているほうが得策と思った碧は、何もないと笑顔で答えた



……でも、相手は新撰組の鬼副長だ



嘘はつけない


「お前、伊東となんかあったろ?」


ため息混じりにそう言う


でも、心配している声音だ


こうなったら、頷くほかない


「はい…」


「何があったんだ?…聞かせてくれ」

***

別室で一通りあったことを話終えた


すると土方は付け加えるように、伊東について話始める


「あいつはここに着いて早々、不穏な動きを見せてやがる」


「不穏な動き…?」


あぁ、と頷く彼にはもう眉間の皺が刻まれている


「同じ道場から連れてきた門弟たちを集めて、こそこそしてやがる」


もしかしたら、お前を狙っているのかもしれない


それを聞くと、もう愕然とするしかなかった