「……春日さんっ!」


振り向いたかと思うと、途端に碧の視界は暗くなる


「っ!」


碧は沖田に抱き締められていた


「すみません…すみません!」


謝る沖田の声は震えている


――泣いているのだろうか?


不安になり一旦離れようとしたが…


――お、沖田さん!?


動揺してしまうほど、彼はきつく抱き締めているようだ

***
ようやく落ち着いた頃…


沖田と碧は縁側に座っていた


しかし何も話さない


2人の間を風だけが吹き抜けていく


でも、恐怖はもうなかった


一緒にいて、安心できるのだと思えた


「春日さん…」


「…はい」


不意にかけられた言葉はあまりに痛々しいものだった


「さっきのこと、忘れてください…」


「さっきって…」


「僕が貴女を助けて、抱き締めてしまったこと…」


「な、なんで…「変な気を起こさないでほしいんです」


それだけいうと、沖田は宴会場の方向へ向かっていく


――沖田さんにとっては、苦しいものなのかな…



忘れてほしい、だなんて…


本当はとても嬉しかった


ずっと夢見てた彼の優しさ、気持ち


それはほんの一瞬で


尊いものだった