食器を粗方、片付けると



碧は2人分のお茶を煎れ、自室へ戻る



まだ温かいお茶は湯気がたっていた



「遅くなってすみません…」



「いえ…」



実はこのとき、



私がタイムスリップしてから2度目の顔合わせだった



――なんだか、居心地悪いかも



あのとき以来の会話…


ぎこちなさが残る

***

山南の分のお茶を置くと、彼は早速話し始めた


「あなたは、もしここから出たいと思ったら…何処へ行きますか?」



「ここから出るんですよね…」


――そんなこと、ここに来てから考えたこともなかった


というのも


碧はあまり慣れない京の町並みには出たことがないのだ



でも、碧には行ってみたい場所が1つだけある


それは…


「私は江戸へ行きたいです!」


「江戸かい?それはまた、どうして?」


「…皆さんの始まりの場所だからです」


「始まり……か」


途端に、山南は遠い目をする


彼の手に握られた湯呑みが、小刻みに震えている


「山南さん?」


呼ぶと、彼は薄く微笑みながら言った


「私も行ってみたくなりました…。江戸へ」