その夜



池田屋事件での活躍により報奨金が出たため、皆、遊郭 へと出かけて行った



私はなんとなく乗り気ではなかったので、屯所で帰りを待つことになった



静かな夜



普段なら大勢人がいるせいか…



なんだか寂しかった

***
自室で夕食を済ませ、勝手場へ運ぼうとしたとき


「少し、よろしいですか?」



控えめな声がした



――誰だろう



声の主が分からず碧は首をかしげる



すると、スッと障子が開けられ長身の眼鏡をかけた男が現れた



――山南 敬助



「あ…こんばんは。山南さん」



新撰組 総長の山南 敬助だった



「突然申し訳ない…君に尋ねたいことがあるのだが」



「なんでしょう?」


このとき、彼が目には見えない苦しみを抱えていたなんて…




今思えば、私はどれだけ非力だったのだろうか