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興奮する心臓…



僕は自分の考えとは裏腹なことを、彼女に突きつけた



ひどく怯えたその表情からは、きっと僕に失望しただろう



部屋を出て、廊下を曲がると



「…ひでェこと口走ったな」



腕組みをして苦笑いを浮かべる土方がいた



「いいえ…。あのくらいが普通だと思いますけど」



握りしめた自分の拳に、じとっと汗が滲む



「普通…か。そりゃ嘘だな」



「なんでそんなこと、土方さんがわかるのです?」



「お前だって、なんかの理由があって碧が来ちまったことぐらい…わかるだろう」



「いいえ、わかりません。理解したくもないです」



僕はそれだけ言うと立ち去ろうとした



でも


「…総司。ちったぁお前も素直になれよ」



――普段から素直じゃない、あなたに言われたくない


そう毒づいたことは別として


「これでも、素直な方だと思うのですが…?」



皮肉るように土方に言った



でも彼は、微かに薄く笑みを浮かべて


「碧のこと…。あいつはお前にとってどんな存在なんだ?」



言って、彼は歩いて行ってしまう



――春日碧



僕にとっての彼女の存在



考えたこともない、その疑問に



僕は惑わされた