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油小路事件後


新撰組は、西本願寺から不動堂屋敷へと屯所を移転した


西本願寺の僧たちが資金を注ぎ込み、移転を進めたのだ


つまりは体よく追っ払われたということ


本願寺の境内での大砲打ち込み訓練などの稽古を見て、僧たちは陰口を叩いていた


――新撰組には出ていってもらいたい


その思いが強くなってのことだろう


移転の話が出たとき、近藤以外は苦い顔をした


「こんなことで移転するなんて…何のために西本願寺に来たんだよ?」


胡座をかき、永倉は苛立ちを隠せぬそぶりで近藤に当たった


だが、当の近藤は微笑をたたえる


「……いや、この話を良しとするかは個々の判断であろう」


満足気な彼は、扇子を懐から取りだし扇ぎ始めた


「じゃあ何だ?近藤さんは移転に賛成なのかよ?」


「あぁ、それでいいと思っているさ。何せ資金を注ぎ込んで、我らのために屯所を造ってくれたのだからな!」


「……そうなるとあんたは殿にでもなるのか?俺らは家来なのか?」


冗談じゃねえと吐き捨てた永倉は、部屋を出た


「近藤さん…今回は少し考えの度が過ぎてやがる」


「そうか?」


土方に釘を刺されてもなお、近藤は笑っていた


最近様子が変であった