…数刻後


ふらふらと覚束ない足取りで、伊東は玄関へと向かった


「おぉおぉ…大丈夫ですかな?」


と心配した近藤がてを貸そうとしたが、それを軽く手払いして伊東は出ていく


「大丈夫ですわ~…今夜は楽しいお話が沢山できたわ。また会いましょう…ご機嫌よう」


呂律もままならないようで…


伊東は千鳥足で御陵衞士屯所へともどって行った


その様子を遠目で見ていた土方は、近くにいた平隊士に指示を出す


「……伊東は屯所へ戻っていった。奴の先回りをして待ち伏せしろ」


承知、と短く答えた平隊士は足早に駆けていく


「………今夜ですね、副長」


どこから現れたのか…


斎藤が低く言った


「あぁ…頼んだぞ」


「御意」


カチャリと刀を鳴らした斎藤は、平隊士の後を追う


彼らの姿が小さくなるにつれ、碧の不安は増していた


ふと…


足元に気配を感じる


チリリリン…


チリリン……


鈴の音が聞こえてきた