「来たようだな…歳」


「変に振る舞うんじゃねぇよ?勘づかれたら終いだ」


短く会話した2人は、警戒を解かない伊東を迎えた


顔には出ていないが、この状況に伊東は敏感になっている


「……あら、お久しぶりですわね」


含まれる笑みにも黒いものがあった


そうですな、と近藤が答えると碧は酌に廻る


――できるだけ伊東に酌をしろ


あのとき言われた土方の言葉を思い出して……


「おや…碧さん…お久しぶりね」


酌をする碧を、伊東は覗き込む


次から次へと酌が進むせいか、伊東は酒の香りを纏っている


その香りに少しだけ顔を歪めた碧は、尚も酒をついだ


「あらあら…こんなに沢山注いでくださるの?女性に注いでもらう酒は格別ですわね」


「そうですな!やっぱりお酌は女子がやるものですな」


上機嫌な伊東に被さるようにして、近藤が話を弾ませた


「…そういえば、近藤さんには妻子がいらっしゃるとか……?」


「おぉ?よくご存じで?…」


「それはそうですわ!同志ではありませんか」


同志…


伊東の口から出るのも終わりに近づく言葉だ


元より、そのような志で分離したのではないのだから