でも……


彼女は今、傍にいない


自分から拒絶しておいて、寂しいと思うだなんて…


―――馬鹿らしいな


そう思い苦笑いして頬を緩ませる


ズキッと胸が痛むのは、労咳のせいなのか…それとも、


「総司…入るぞ」


と控えめな声が廊下から聞こえる


懐かしいその声は


「斎藤さんっ!?」


障子を開くと、そこには離脱したはずの斎藤一がいた


正座して姿勢よく、彼は待っている


何故?と沖田が問うまえに、斎藤が口を開く


「伊東甲子太郎を殺す」


「な、なに言って…「伊東は新撰組を乗っ取り、局長暗殺を目論んでいる」


「あん…さ…つ?」


そして首を縦に振った斎藤は、付け加えるように言う


「平助を…あいつをこちらへ戻すのならば、今回のこの機会だけだろう」


実際、藤堂は自分のはっきりとした意志で離脱したのではない


伊東を新撰組に勧誘した張本人のため、責任を負う立場にしたのだ


そのためか、藤堂はあまり伊東一派との関わりが少ない


むしろ、信用されなかった


その苦しい思いから救うために、藤堂の救出を試みたのだ