そろり、歩き出すと佐々木君が机の方に近づいてきた。

カバンを取りに来たんだ。
もうあたし、行っちゃっていいんだよね、挨拶したし。



「沙紀チャン、」

「はい?」

「もしかして、オレの事わかってない?」

なにがなのか、それすら思い当たらない。胸のカバンにギュッと力を込めた。



「あの、なんで名前呼びなの?」

クスッと笑い声がした。


「そっかぁ。なーんだそれじゃ…
今日のオレすんごいイタイ人だっだよね・・・
まぁいいか。」


「・・・、」

「これからどこに行くの?」

「図書・・室。」


「そっか、じゃ、またね。」


答えてないし、一人で勝手になんか納得してるし、『またね』の意味がわからない。


もう頷くしかできなかった。
耳まで真っ赤になってるよね。恥ずかしい。恥ずかしくてしかたない。


明日からどうしよう。

心臓壊れるかも!








  こんなにドキドキするのは
     初めて・・・です。






真横を通り過ぎた「バイバイ」


すごく優しい笑顔でした――――




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