見てなかったけど、近づいてきた気配はわかっていた。

キャッと騒めく女子数人の声とともに隣の机がガタっと動く。


「オレ、ここだ。」

あー、嘘だよね。
誰か嘘だと言って。

その声の主は次に信じられない声を放った。





「よろしくね、沙紀チャン。」

さっきまでの無愛想とは全く違う、ものすごい満面の笑みを浮かべたその人。



「は?」

あたし、ものすごいマヌケ顔してたと思う。
なんで?名前呼び?



「へーー、沙紀ちゃんって呼ばれてんの?僕もよろしくね。」

いつの間にか前に座ってたのは、2番人気(たぶん)の上条君。爽やかな笑顔が振り向いた。



「馴れ馴れしく呼ぶなよ。」

あなたもですけど。
あたし、今、この瞬間クラスの女子全員、敵にまわしました。初日からですか。目立ちたくないのに。


「・・・、」

ショックで意識を失いそう。