『卒業証書授与。』


いつもとは違う空気が流れる体育館。



卒業証書をもらったら、零はこの学校の生徒じゃなくなる。


俺と零は教師と生徒、と言う関係ではなくなるんだよな?


もう、教師だから。

なんて気になくてよくなるんだよな??


もう我慢なんてしなくていいんだよな??



『西城零』

伊藤先生が低く名前を呼んだ。



「はい。」


零は普段あまり大きい声を出さないが、今日の返事は大きかった。


立ち上がった零。


目に涙が溜まっているように見えるのは、気のせいか??


零は上を向いて必死に涙を零さないようにしていた。


別に我慢しなくてもいいのに。


泣いてもいいのに。



『以上、36名。』


伊藤先生が頭を下げた。


そうすると俺のクラスのみんなは座る。


俺は一度零から視線を逸らした。


そして父兄席に目を向けた。


あ。


浩介じゃないか。


父兄席には浩介の姿。


浩介は温かい目で零を見つめていた。


なんか本当の親父みたいだよな。