『まだバレてないと思いますが…

もしかしたらバレてるかもしれないです。


こういうときはどうすればいいですか??』

と、俺が言うと黙り込む水谷先生。


「私がその答え…知ってると思いますか?!

先生と同じ新米教師ですよ?!

伊藤先生とかに聞けばいいじゃないですか…」


『その答えは…ありません。』

急に後ろから声がした。


後ろを振り返ると

『「伊藤先生?!」』

がいた。


いつのまに…いらしたんですか??


『驚かしてすみません。


近くにいたんで聞こえたんですが、
朝倉先生はお困りのようですね。

生徒は好奇心で溢れています。


だからできるだけ自然に巻いて、回避してください。

朝倉先生ならできると思いますよ?


頑張ってくださいね。』


オジサン臭い笑顔を残し去って行った。


「朝倉先生!!
頑張ってくださいね。」


水谷先生はお先に失礼します。と言って帰って行った。


何をどう頑張ればいいんだか…と言う思いで俺も学校を出た。


少し後ろに意識するが今日は誰もいないみたいだ。


『久しぶりに真っ直ぐ帰れるなぁ~』

ここのところ生徒を巻くために寄り道ばっかりしてたからな…


嬉しくて歩く速度が速くなる。




このときの俺はバカすぎたんだ。


浮かれすぎて気づいていなかった…

自分の後ろに身を潜めている黒い影に…。


もしかしたら

このときから

少しずつ…

零と俺の歯車が

狂い始めていたのかもしれない…