あたしは勝手に
今日だけだと思い込んで
何も言わなかった。


それからまた父と上司は
缶ビールで乾杯し
もともとお酒があまり強くない父は
そのまま眠ってしまった。



父を眠らせたのも
上司の考えのうちだったのだろう。



父が深い眠りに落ちてから
あたしの部屋に入ってきた。



「…あの、どうしたんですか?」

「えっと~、トイレどこかな?」

「つきあたりのとこですけど…。
あの…。」



トイレの場所を教えたのに
あたしの部屋から
出ていこうとしなかった。



それどころかニヤニヤしながら
あたしに近づいてきた。



「あの…なんですか?
トイレはあっちですけど…。」

「お父さんさ、仕事よく頑張ってるよね。
今、家大変でしょ。
おじさんね、お父さんの上司なの。
藍美ちゃんの今の対応次第で
お父さんの仕事がなくなるか
それともお給料があがるかなんだ。」



あたしも、それなりの年齢だから
上司がなにを言いたいのかぐらいわかった。