そんな莉央さんが、番長じゃなくなった時、なんだか、いつもと雰囲気が違って見えた。

卒業式の最中、少しも泣く様子を見せなかった莉央さん。

その莉央さんが泣いたのだ。

今まで、弱い姿を見たことがなかったから、少し焦る。

強がって、俺には泣いてる顔を見せまいと、後ろを向いて、早口でまくしたてるように彼女はしゃべった。

偉大な莉央さんが、初めて女の子に見えた瞬間。

その瞬間に、俺は彼女を抱き締めていた。

そうした彼女の背中は、いつも見ていた頼れる、広い背中ではなくて、思った以上に小さく、かすかに震えていた。

「ありがとう。」

彼女の言った言葉が、俺の胸を熱くする。

人には見せない莉央さんの弱い姿、俺だけ見れて、すげー優越感。

あー、弥央ちゃんに告りに行かなくて本当よかった、なーんて、本気で思った。

1年後、莉央さんと同じ高校に行く時には、莉央さんみたいなかっこいい人に絶対なるっっ!!って思った卒業式。