…何を、謝るんだよ。

「あなたが温かいなら、それでいいです」

「ごめんね、蘭。いつもいつも…心配かけて」

そう思うなら、ちょっとはその無茶する性格を治せよ…。

それでも、凜が無事でいてくれて嬉しい俺は。

「あなたが無事でいてくれたら、それでいいんです」

なんて、言っちゃうんだ。

「怒ってる?」

…は?

いきなりの凜からの質問。

そりゃ、怒ってるさ。

「……怒ってません」

でも、守れなかった俺が、怒る資格なんてない。

「絶対怒ってる!」

「怒ってません」

それでも不機嫌な声をなるのは、許せよ。

「怒ってるよぉ~」

凜が泣き出しそうな声で訴える。

…そんな声出されたら。

折れるしか、ないじゃんか。

「泣かないでくださいよ。…ただ、あなたが私の手を解いたから…」

「だっ…て、蘭まで落ちちゃうじゃん」

俺くらい…どうなろうとどうでもいいんだよ。

「…凜姫様、私の気持ち分かってます?あなたが傷ついたら、耐えられないんですよ?」

部下としてじゃなく、一人の男として。

「…あたしだって、蘭が傷ついたら耐えられない…」

「……そんなこと、私なんかに言わないでください…」

期待をして、しまうから。

してはいけない期待を。

したって、叶うことのない、ありえるはずのない、期待を。