…は?

凜が立っていたのは、崖っぷち。

俺は凜が落ちる前に、腕をつかんだ。

「凜姫様!?」

「蘭…離せ…」

離せ、じゃねぇよ!!

「蘭、あたしはいいから、離して!」

「なにがいいんですか!海だからって、落ちていい理由にはな らないんですよ!?それにっ、怪我してるじゃないですか!」

焦る俺とは裏腹に。

凜は無理やり…俺の手を解いた。

「凜姫様!?…こんの…馬鹿姫!」

凜に対して暴言を吐いているとか、そんなことはもう頭になかった。

凜が落ちるなら、俺も落ちる。

…落ちたとしても、俺が必ず凜を助ける。

「馬鹿は蘭だっ!なんで一緒に…」

お前はそんなことも分からないほど、馬鹿なのか?

俺は力の限り、凜を抱きしめる。

凜が、怖くないように。

そのまま二人で、逆さまに落ちてゆく。

「…らっ」

「……死なせねぇ」

死なせて、たまるか。

この世で一番、大切な姫。

大切な人。

この命に代えても、守りたい。

たった一人の、大好きな人…。