凜の命で、皆が動き出す。

「はあっ!」

「おりゃっ!」

「くそっ…女のくせにっ」

「女だからって、舐めんな!」

女のくせに…?

てめぇらに、そんなこと言われる筋合いはない。

凜がてめぇらみたいな腐った根性のやつらに、負けるわけがない。

守りたい、もののために戦っているのだから。

「…覚悟しろっ!」

凜が、叫ぶ。

「頭を狙え!」

「姫様、こいつです!」

「よし、でかした!」

頭を捕まえてしまえば…終わる。

「くそっ…」

「…もう、やめるか?…否か」

凜は敵の頭を見つめ、尋ねる。

静かだが…凜とした声音。

「………やめてやるよ」

頭が、ぼそっとそう呟いた。

「凜、よくやったな」

「父上…」

ほっとしたように、凜は殿を見る。

…お疲れ様、さすが凜だよ。

「…きつ…」

「凜、後は私に任せて。蘭之介。凜を」

「はっ。凜姫様、帰りますよ」

疲れきっている凜を早く休ませてあげたい。

「ん…」

…凜……ごめん。

「蘭…限界かも…」

「無茶しすぎです。…乗りますか?」

俺の背中に。

凜は意味が分かってないみたいだったから、説明しようとしたとき。

凜が…視界から、ふっと消えた…。